「こぢょっこでら」こと本住寺には、見上げるほど大きな薮椿(やぶつばき)の木が数本あります。
その大きな幹に沢山の花をつけ、今年も見頃を迎えました。
薮椿は学名「カメリアジャポニカ」といい、その名の通り日本原産で、古くから日本に自生していて
『古事記』や『日本書紀』など、古い文献にも出ているのだとか。
ポトリ…と花が丸ごと落ちる様子が首の落ちるさまを連想させるということで、
お見舞いに持って行くには不向きな花ですが、観賞用には大変好まれ、
茶道では冬場の炉の季節によく用いられるため『茶花の女王』とも呼ばれるそうです。
決して珍しくもなんともない花ですが、鮮やかな赤と慎ましやかに咲く姿は見る人の心を癒してくれます。
花が咲いている期間も長く、冬から春にかけて楽しませてくれるのもいいですね。
また、椿は花が綺麗なだけでなく、種子には良質な油が含まれていて、あの『ツバキ油』が搾られます。
ツバキ油は古くから食用や頭髪ケアに使われ、酸化・劣化しにくい油だそうです。
頭髪や肌のケアは勿論のこと、食用として使用した場合、
血液中の善玉コレステロールを減少させずに悪玉コレステロールを減らす効果があるといわれ、
その食味性にも優れ、特に揚げ物がサクッとした軽い仕上がりになるそうです。
食べられると知って、住職夫妻のテンションは俄然上がって来ました!
こんなに沢山薮椿があるので、もしかして種を拾い集めたら『こぢょっこでら産ツバキ油』が搾れるのかも!!
そんな軽い思いつきから始まって、昨年の今頃、
『こぢょっこでら特別プロジェクト・ツバキ油しぼり隊』
が密かに動き出したのです。
さて、花が終わり、季節は夏を越えて秋に…
10月半ば頃、熟れた実が弾けて種が落ちてきました。
椿の木の根元に落ちてきた種を一つ一つ拾い集めていきます。
強い風が吹いた後などは特にチャンスです!
拾った種は土がついて汚れたりしているので、
ちゃんと洗って天日に干し、しっかりと乾かしていきました。
これを繰り返すこと数回。
ひたすら拾い集めた種は、なんと!11キロを超えました。
こうして拾い集めてみると、結構あるものですね!
そして、ツバキ油を搾る手順を調べてみたのですが…
①収穫して天日干しで乾燥
↓
②種を細かく砕いて蒸す
↓
③袋などに入れ圧搾する
↓
④火にかけて水分を蒸発させる
簡単にまとめるとこのような手順となり、種1キロあたりから100ccほどの油が出来るらしい、とのことでした。
自分たちで搾油できるかどうかも含め、色々と調べ検討してみたのですが、
ここはやはり専門の職人さんの手を借りることが最善だと判断しました。
恐る恐る、とある製油所に電話をかけて問い合わせてみたところ、
快く搾油を引き受けてくださいました。
ウキウキした気持ちで薮椿の種を段ボール箱に詰めて、
早速送らせていただきました。
そして待つこと数週間、待ちに待った待望のツバキ油が届きました♪
12キロ程の種子から約一升と、思っていた以上のツバキ油がとれました。
写真では伝わりにくいかもしれませんが、本当に綺麗な黄金色なんです!
蓋を開けてそっと匂いを嗅いでみると、ナッツ類のような香ばしくて良い匂いがします。
ツバキ油を搾った搾りかすも全部送り返していただきました。
この搾りかすは肥料や害虫予防、また燃料などにも使えるそうです。
これだけの量があれば、みんなで楽しむことができそうです。
天ぷらにしようか、串揚げにしようか、それとも…
お腹の虫と相談しながら想像はどんどん膨らみます。
色々と考えた結果、正月にお供えしたお餅を揚げてあられを作ってみよう!ということになりました。
サクサクのあられを作るポイントはよく乾燥させることだと聞いたので、しっかりと乾燥させ細かく砕いていきました。
さぁ、あとはこのお餅のかけらを『こぢょっこ寺産ツバキ油』で揚げるだけです。
なんだかワクワクしますね!
さて、このこぢょっこ寺産のツバキ油と、乾燥させて小さく砕いた御宝前の鏡餅 ですが 、
春のお彼岸法要の後、あられにしてお参りに来られた皆さまと一緒に味わいたいと思っております!
初めての試みなので、どのような感じになるのかわかりませんが、今からとても楽しみです。
皆さま、お彼岸の中日ということでお忙しいとは存じますが、是非こぢょっこ寺にお越しくださいませ!
本住寺 春の彼岸会
午前10時~